「それにしてもさぁ。あのジーンズ、実は俺も持ってる。今後プレミア価格とかつかないかな?」 未使用ならな…。「あとあのTシャツは某量販店のだろ?今頃争奪戦かもなぁ。ネットじゃ世界的にsold outじゃないのか?」 某量販店からも菓子折りくらいは欲しい。リンカはまだ食べれないか。ゼリーっぽいっものならリンカも食べれるかもな・・・って菓子折りは絶対来ないんだよな。夢を見るのはやめよう。 放課後帰宅した。久しぶりに家にいる気がする。今日の夕飯はなんだろう?あ、投稿?今日はあの家をねーちゃんが使ってるから、今日はお休みです。「父さんが置いて行ったんだけど、某量販店が感謝に菓子折りをソニア本社まで持ってきたらしいわ。まあそうよね、コウジ君が動画で使ったのが原因で売れ残るかと思われていた商品が一気に売り切れだもんね。そんなわけだから、みんなで食べちゃいましょ?ソニアが盗聴器とかその類がこの箱とかに仕掛けられていないか検査済みよ」 某量販店、信用ねーな。 幸いゼリー系もあったから、それはリンカに譲った。俺らは固形物食べられるし?大人げないって母さんに怒られたけど。この家の中では母さんも赤ちゃん言葉。 美味しくいただきました。これからも某量販店の服にはお世話になると思いますが。昔父さんがバスローブ買った時に「あんたが着るの?」みたいな目で見られた。って言ってた。 「ただいま~!おお、珍しくコウジもいるな」 最近はずっと投稿しまくってたからね。「おお、いとしのリンカちゃんまで~‼じいじはがんばって働いてきまちたよ!」 うん、気持ち悪くて、ウザい。母さんは可愛かったけど、父さんはなぁ……。「ねーちゃん、なんか俺の動画で俺が着てた服がバカ売れしたお礼って某量販店が持ってきた菓子折り。見繕って持って帰ったら?」「そうね、その方が(精神衛生上)良さそうだわ。リンカ、帰るわよ。父さんが待ってる」「だー」 そう言って、ねーちゃんとリンカは升田さんのところへと帰っていった。「サヤカはともかくリンカちゃんまで!お前は俺に何か恨みがあるのか?」 そう父さんに言われるとなぁ。すぐには思いつかないけど、いろいろ恨みはあると思う。 最近の恨みはそうだなぁ…? 父さんの仕事(動画の撮影から編集まで)を俺に丸投げしたところか?父さんはリンカにデレデレ遊んでるし。ねーち
うーん、喉仏隠してたっけ? あまりに自然すぎて見逃した? 助けて~升田の親父さん~!「何?二人説が流れる仕様の動画を作ったのに、そんなことより、二人が出来てるのかとかそんな話が出てきたとな?実に高校生らしい。で、コウジ君の動画だが、最初から喉は隠してない。コウジ君なぁ、喉仏が目立つタイプじゃないんだよ」 低音出るのにか? 高音が出る理由がわからないからまぁいっか。 俺としてはめっちゃ男バージョンと女バージョンで絡んでる動画を撮ったつもりがこんな事になるとは…。 ん?だから、二人が出来てるとかの話になってるのか。反省。 どうすればいいかなぁ? 噂だと割り切って、今まで通りに投稿続けよう。 今日は、えーとどっちだ?俺はどっちでもいいが。そういう時は、男バージョンで撮るか。 特にストレスが溜まってるわけじゃないしな。 まず、升田の親父さんに「昨日の投稿、昔の『T』みたいで懐かしかった~」って言われないように、オリジナリティが必要だよな。 本っ当に男バージョンというのはアイディアが出ないもんだ。 弓道で的を真剣に見つめながら、歌いましょう。 服は用意できる。しかし、問題がある。モヤシっ子の俺は弓を引くという動作をできるのか?あれって結構な筋力が必要だよな?うーん。 あ、ダーツならどうだ?筋力は特に必要なさそうに見える。多くは必要としないだろうな。衣装はどうしよう? 着崩したタキシードとか?なかったら俺は作る! ダーツ自体はあるんだよなぁ。チョット薄暗いビリヤード台の側にダーツをするところがある。 タキシードを作るのは時間がかかりそうだな?うーん、英国紳士的なスーツ。 なんかジャケットの中に3つボタンのベストみたいのがあるスーツだな、それを着崩す。持ってたっけ?父さんも。 あとは燕尾服みたいな。執事さんが着てるよ~って感じのやつ。 最近のダーツは気軽だから、逆にウォッシュ加工したジーンズとかの方がいいかな?それなら俺が持ってる。上は量産店で買ったTシャツ(襟がくたびれてる)を着よう。うん。持ち物から身バレは嫌だからな。 男バージョンは露出が少ないなぁ。正直なところつまらん。 歌うのは何にしようかな? 昔のムード歌謡がいいかな?チョット薄暗いし。 さ、歌も衣装も決まったことだし、さっさと撮影して編集。そして家に帰っ
「リンカちゃーん!じいじでちゅよ!」「父さん、気持ち悪くて、ウザい。書に集中できないから、ちょっと黙っててよ」 今日は本当に久しぶりにサヤカの『麗矢』の撮影。撮りためた方がいいかな?「あ、悪い。麗矢の書もソニアの上司が欲しがっててさぁ。一部ほしい。父さんが中間管理職だと思ってこの通り!」 俺は合掌してサヤカに頼んだ。サヤカにyesと言ってもらえなかったら、会社首になるかも。中間管理職って辛い。 サヤカは怪訝な顔をしながらもOKしてくれた。「今は産休と育休中だけど、本当なら超多忙な書家なんですからね!」 サヤカは顔出しもメディアもOKにしたところ、そのルックスからかいろんなメディアが注目するようになった。サヤカから、『T』、『S』、『K』の正体がバレない事を祈る。 その辺はまあ、ソニアがメディアに睨みを聞かせてると思う。とはいえ、情報化社会だからなぁ。自宅(実家)の場所から家族構成までネットに載ってる始末。 暗殺部隊がいたら、うちに関わる情報を流した奴の命はない。 コウジの高校まで載ってるからなぁ。 『麗矢』の家は寿司屋という事で、あの寿司屋も儲けているんだろうな。「じゃ、サヤカ」「『麗矢』よ!」 怒られた……。娘に。「今日も思うがままに書いてくれ」「それが師匠の教えですから!」 その日、サヤカが書いた文字は、読み解くと……。 『親は子のためにあれ』 だ。これを上司に渡すのか?「えーっと何件か撮りためしたいんだけど、今日は忙しい?」「そういう予定は早めに行ってよね!」「夕飯の買い出しに行ってとかこっちもいろいろ予定があるんだから!」 はいもっともです。ごめんなさい。「以後気を付けます。では、来週にでも撮りためてしまおうと思います。その方がサヤカの生活も楽でしょう?」「突然言われるのは困るけど、まあ撮りためておくのはいいかなぁー」「じゃあ、そういうことで!リンカちゃーん!また今度あいまちょうね。じいじのこと覚えていてね」「その赤ちゃん言葉気持ち悪い」 バッサリと切られた。 今日はねーちゃんの撮影をしたはずだ。リンカとも会って、ご機嫌のはずの父さんが凹んでいる。「父さん、どうしたんだ?」「聞いてくれるか?息子よ!可愛いリンカちゃん相手に赤ちゃん言葉で話していたんだな。無意識だ。そしたら、サヤカに……」「気持
うーんやりきれないこの想いを受け止めてくれ! 男バージョンと女バージョンの同時デュエット曲で俺はこのイライラを鎮める。 どうしてくれよう?この二人(俺だけど)ベッドで絡んでもらおうか? 最初に男バージョンの撮影。 どうして真剣なまなざしでこの落書きされていたマネキンを見なければならないんだろう? いや、心を無に。このマネキンが俺の愛する女だ。って感じで歌おう。 俺に向かってカメラは置いてある。 当然俺はほぼ裸体。 首筋とか鎖骨のとこにキスマークをつけた。 あと、汗ばんでます!って演出でスプレーカモン!というわけで。髪も乱れ顔も髪も汗ばんでるよって移ってる予定。 撮影後、録画画面チェック!いいんじゃないか?あとは女バージョンの撮影だな。 同じとこにキスマークは変だから違うとこにしましょう。あと脚。 女バージョンの撮影でも心を無に、大好きな人だからって感じで歌おう。…マネキン相手に。 女バージョンの撮影は特別。脚をマネキンに絡ませてるところも撮影。これはオープニングで使おうか?その脚にはキスマークが! 隣に男バージョンが寝ている感じで。時々嬌声みたいのを入れてみる。 女バージョンの撮影も終了後、録画画面チェック!なんとかなるだろう。 さ、編集編集。 こうして『K』は二人説が出来上がる。 俺の努力の結晶なのに。超頑張ったのに、あのマネキン相手に。 あのマネキンに落書きしたのって父さんの幼馴染とか言ってなかったっけ?人が嫌がる事が好きなのか? ******* 翌日の教室で俺は反応を見る。「やっぱり『K』は二人いたんだよ。だって男であんな高音出したりとか無理だよな?」 スイマセン。出しました。「二人でもなんでもいいわよ。あの二人はできてるの?双子とかなの?」「そうだよなぁ。俺は『K』相手に女の『K』は落とせない」 どっちにしろ無理だ。俺にそんな趣味ないからな。「私も色気と可愛さが同居するみたいな子相手にするのは無理」「「「「「はぁ~~」」」」」 スゴイ凹みようだな? 父さんはどうやって『T』様二人説を消したんだっけ? あ、女バージョンの時に喉仏を消し忘れたって言ってたっけ?あれ?父さん的には二人説があろうとなかろうと関係なかった? 俺、超頑張ってデュエット曲撮ったのに、男か女かが気になるだけ?もっと簡単に
翌日から俺は作詞・作曲に取り組んだ。 最近というか、結構前から生成AIさんが結構手伝ってくれるので助かる。 俺が「明るい感じで」と言ったらそんな感じで作詞をして、曲をつけてくれる。 生成AIサマサマって感じだな。作詞・作曲『K』&生成AIってなりそうだ。 そうなると、生成AIをプログラムした人にもお金が入るのか? それはそれで問題だなぁ。 きついけど、自分で頑張ろう……。 明るい系と、色っぽい系があればいいかな? 迷ったら、升田の親父さんに相談だ。…寿司食えるし。「コウジ君は素直だなぁ。ほら、食った食った。あ、脚には影響しない程度にな」 太り過ぎとかか?寿しで太るとか贅沢だなぁ。「曲は一曲でいいんだよ。で、重要なのは編曲だ。そこでチェンジしていく方が面白いと俺は思うんだが、大成はどう思う?」「そうだね、たくさん作る事を考えると同じ曲を編曲で変える方が聞いてる方は「なんなの?同じ曲でこんなに違う」ってなると思うけどなぁ」 そっかぁ。なるほどなぁ、参考になるなぁ。ただの脚フェチじゃないんだな…。 よし!「俺、頑張っていいのを作ります!」「詩はさぁ、見てる人次第ってことで、とにかく作曲をして男女のバージョンで使ってみるってのは?」 それもそうだな。詩を押し付けるのもなんだな。「ありがとうございました!」 そう言って俺は升田家を去った。「サヤカ、今日もコウジ君が悩んでるみたいだったぞ。コウジ君は相談相手として親父を選んだみたいだなぁ?」「寿司も食べれるしね。あらあら、リンカどうしたの?起きちゃったかぁ。寝付くまで結構かかるのよねこの子…。昼間に騒いだと思ったんだけどなぁ」「そういうわけで、俺はまた寿司の修行するよ。まだまだ半人前扱いだからなぁ。いい年こいて」「私もいい年こいて半人前の書家よ?いいんじゃない?それより、騒いだのってうちの父さんが原因なんでしょ?当の父さんは疲れてぐっすりよ?平和なもんよね~」 なんて話されているとも知らずに、俺は作曲に取り組んだ。 ……どこから取り組めばいいんだろう? こういう時にギターが出来る奴はギターのコードをなんか並べて曲作ったりするのかなぁ?よくわからん。 原型になる曲は全部ハ長調にしてしまえ。 ちょっと悲しい感じにしてければ短調にすれないいし、音楽知識のない自分に虚しくなる。
「ほう、主題歌の作詞・作曲もお前がするのか?」「誰かが作ったものじゃ、ダメだろ?」「まぁそうだな…」 短編連続ドラマ…大変そうだけどちょっと興味がある。1回につき2分とかにしておこう。演技とか全くの素人だし。 とりあえず今日のところは女バージョンの撮影にしよう。 で思いっきり、低音で歌ってみよう。反応はどうなんだろう?「あ、女バージョンの時は女声で、男バージョンの時は男声で歌うのがベターだ。需要が大事だ」 との元祖『T』からのお言葉をいただいたので、姑息なことは考えずに、結局は男バージョンでマイクスタンドにピンスポットあててムード歌謡を歌いましょう。 そうだなぁ汗ばんでる演出。自らの顔と髪にスプレーで水をかける。 服は乱れてる感じ?乱れて覗くシャツの中鎖骨にはキスマークがしっかりと!ここら辺も汗ばんでください。スプレーカモン!で、キスマークはもちろんウォータープルーフの化粧品で作る。我ながらリアル過ぎてスゲーなと思う。 ピンスポットの熱気にも負けずに歌いました。暑かったです。 翌日の教室の反応を待ちましょう。 おやすみなさい! ******** 翌日、教室は遠くからでもわかるほどに盛り上がっていた。「やっぱり『K』様は男なのよ!昨日ほどマイクスタンドになりたいと思ったことはないわよ!」 普段の生活の中、マイクスタンドになりたいと思う事ないもんな。「胸に晒しを撒いたりなんかすれば、男性に化けることも可能だろ?」「そっちだって胸にパッド入れれば女性になれるわよ!」 胸で男女を判断してるのか?『K』は貧乳なんだが?「それにちゃんと見たの?あの手の動き!艶めかしくって!あの手がまた良かったわぁ」 恐れ入ります。「『K』様は手も美しいのねぇ」 お褒めにあずかり光栄です。ここにその手があるけど?マイクスタンド、ピンスポットで温まり過ぎ、熱くて火傷するかと思った。「なぁ、なんか『K』様が男か女かって論争ずっとしてねーか?もう、『この世は‘男・女・『K』様’で出来ている』って話に収束すればよくねー?」 おい、俺は新しい性別か?父さんもそんなことあったとか言ってたな。「「「「さんせー」」」」 マジかよ…。「はははっ懐かしいなぁ。コウジ君もクラスメートがそんなこと言いだしたか。コウジ君の父さんも昔は同じこと言われてたぞ。まぁ、